池井戸潤の小説「陸王」が役所広司主演で実写ドラマ化されます。
私がこの作品に出会ったのは、昨年の7月と小説が発売されてすぐのことです。
何!?この凄まじい疾走感と爽快感は・・・?
初めて「陸王」を読んだ時から、この本の面白さにとてつもなく惹かれ、大好きな作品となりました。
実写化では、映像化ならではのスピード感や臨場感が楽しみです。

というような方に向けて、陸王のあらすじや感想、魅力をお伝えしたいと思います。
あらすじ以降は少しですがネタバレを含みます。
なるべく肝心なところはネタバレしないように書きましたが、未読の方は気を付けてください。
コンテンツ
『陸王』あらすじ
埼玉県行田市にある老舗足袋業者の「こはぜ屋」は創業100年の老舗である。
しかし、足袋の需要は年々減少しており老舗といえども売り上げもそれに伴って減少しており、従業員は27名の零細企業です。
社長の宮沢紘一はこの苦しい状況を何とか打開すべく、攻めの一手に出る。
それも社運を賭けた大きな挑戦だった。
足袋屋のノウハウを生かして、ランニングシューズを作りランニング業界に殴り込みをかける。
社長の宮沢の奮闘に影響され次々と加入していく仲間たち、息子の成長、経営者としての葛藤、ランニングシューズ作りに関わる何人もの視点・・・
多くのエピソードが交錯しながら物語は進みますが、少しも中だるみすることなく一気にラストまで駆け抜けます。
100年の伝統か新規事業か
「こはぜ屋」は老舗の足袋業者だ。
足袋の需要は年々減少しているとあるが、全く知識のない私にも苦しいのだろうなということは分かります。
それは、数少ない和装をする機会でさえ、自分で購入はしなくても事足りるからです。今は振袖も袴もレンタルが多いし、足袋もセットの中に入っています。
足袋だけでなく、「こはぜ屋」の主力商品の地下足袋も安全靴の台頭により苦しくなっていたのです。
社長の宮沢はこのままでは何年持つか分からない、まだ力が少しでも残っている内に現状を打開しようと新商品の開発に取り掛かります。
そして、偶然デパートのシューズ売り場で目にしたのがファイブフィンガーというシューズでした。
5本指のシューズを見て、足袋屋だからこそ作れるシューズがあるのではないかと考え新規事業として「陸王」の開発をすることを決意します。
「陸王」のモデルは無いと公式で否定されているようですが、きねや足袋のMUTEKIが近いのではないかと言う話もあります。
ランニング足袋とはこんなものなのか!とイメージが湧きますね。なかなか評判も良い商品のようです。
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とっても人間くさい!魅力的な登場人物たち
陸王は登場人物が個性豊かで魅力的です。
正直、主人公の宮沢はこの物語の中では特別存在感がある訳ではありません。でも、そこも「陸王」の魅力の一つです。
陸王は宮沢1人の物語ではなく、家族や仲間達との物語だと思った方が楽しく見られると思います。
「飯山春之」シルクレイに人生をかけた男
飯山春之/寺尾聡
陸王のソールに使用しようと宮沢が惚れ込んだ素材「シルクレイ」の特許を持っていた男が、元シルクール社長の飯山とい男です。
繭を原料にしたシルクレイは強靭で軽くそして自然素材なのでエコである。このシルクレイこそが『陸王』の要となるのです。
飯山はシルクレイの開発に巨額の資金を投じ、立ち行かなくなった会社をたたんでいた。会社を失い猜疑心の塊になっていた飯山に協力を仰ぐのは並大抵の事ではなかったのです。
この本で飯山は主人公の宮沢と並ぶか、時にはそれ以上の存在感を放つ存在でした。
1/3位は飯山とシルクレイの話なんじゃないかと思うくらいのエピソードの多さです。
「宮沢大地」将来に悩む宮沢の息子
宮沢大地/山崎賢人
宮沢の息子、大地は大学卒業後も就職活動中の23歳です。
面接に行くもなかなか就職先が決まらず家族との仲も微妙な関係になっていきます。職が決まるまでこはぜ屋で働くことのなるのですが、親の会社で働くことに納得していません。
そんな大地も陸王の開発に関わっていくことになります。
何故自分に内定が出ないのか悩み、苦しむ中で、そしていつしか「仕事」に向き合う姿勢や熱意を周囲の人々から学びます。
始めは本当に態度も悪く、ムカつく大地ですが、徐々に変わっていく姿は必見です。子どもから大人になる過程を見ているみたい。
飯山と大地の師弟関係がピッコロと悟飯のようだ
宮沢の息子の大地は就活で失敗し、家業のこはぜ屋を手伝っていた。
大地は、宮沢の指示で陸王のソールに使用するシルクレイの開発を飯山と共に行うことになります。
始めは飯山の事を半信半疑だった大地も、その仕事への熱意と愛情を目の当たりにして次第に尊敬の念を抱くようになります。
あれ・・・?
この感じどこかで見たことがあるぞ・・・?これは・・・、


一度そうかもと思ったら、もうそのイメージでしか見れなくなってきた。
そして、厳しくも愛情をもって大地と関わる飯山のことが、物語中盤以降どんどん好きになります。
次第に丸くなっていく飯山が、心を開き始めたピッコロさんと被るのです。これ・・・分かる人いるかな?
「茂木裕人」栄光と挫折を知った陸上選手

茂木裕人/竹内涼真
「陸王」は言うならば二本立てのような物語です。
宮沢達こはぜ屋のシューズ作りが一つ、そしてもう一つが陸上選手達の闘いです。物語はほぼ同時進行に進むのですが、どちらの話も熱気に満ちています。
茂木はダイワ食品陸上競技部の長距離選手。大学時代は箱根駅伝のエースランナーでした。
しかし、レースでケガをして走法に悩んでいる選手だった。
スポーツ選手が使用するユニフォームや用具をスポーツメーカーがスポンサーとして提供するのは知っていましたが、「陸王」では深く掘り下げています。
メーカーにとっても自社製品を使用してもうらう事で大きな宣伝になる為、有望な選手に手厚いスポンサードをするのは当然なのですが、選手の側からすると活躍出来なければ手のひらを返されたように自分のもとから去って行ってしまう。
ケガをして戦線離脱している茂木はそれを肌で感じていました。
こはぜ屋のランニングシューズでの挑戦と、茂木の再起をかけたへの挑戦が心地よいリズムで交互に読ませる辺りが、さすがだなと思います。
今回も健在!気持ちの良い悪役たち
池井戸潤作品には個性的な悪役が多数存在しますが、『陸王』も例外ではありません。
こはぜ屋がランニングシューズで競合する、大手メーカーのアトランティスの小原と佐山です。
選手をサポートするはずが、商品を履いて宣伝させることしか頭になく読んでいてイライラしてくるほどの悪役っぷりです。
とはいえ、悪役がいなければ話は盛り上がりませんからね。主人公たち零細企業が大企業に挑んでいく、独特の面白さやワクワク感は本作でも健在です。
実写ではピエール瀧、小藪千豊がこの悪役を演じます。
仕事とは・・・チームでするもの!
どんな仕事も、一人で何もかもやり遂げると言うのは難しい。
誰かの力を借りて、自分の力を貸して、だから一人じゃ出来なかったことが出来るんですよね。
「陸王」を読んで仕事にとって、チームワークというものの大切さを改めて実感しました。
こはぜ屋の宮沢も、最初は社内の仲間ですら全員が味方ではなかった。(生活があるから、リスクのある新規事業に賛成するものばかりではない)
しかし、宮沢の懸命な姿はそんな人々の心を変えていきます。それは社外の人も例外ではない。
次々と力強い仲間がこはぜ屋の加入していく様は、圧巻といってもいいほどのワクワク感を与えてくれる。
陸王は間違いなく傑作だ

池井戸作品はだいぶ読んできましたが、個人的には大企業の話よりもこういった小さい会社の挑戦ストーリーの方が好きですね。
「陸王」は本当に素晴らしかった!もしかしたら一番好きかもしれません。(スポーツ物も好きなので)
私は、息子の大地の年齢が一番近いのでやはり共感するものがありました。時間を忘れて仕事に没頭する気持ちよさ、正直うらやましかったです。
専門的な難しい言葉はほぼ出てこないし、誰が誰だか分からなくなる事もないので、サラッと読めます。
下町ロケットが好きな方はこちらも好きになると思います。ぜひ、読んでみてください。
この本を知り合いから貸してもらってタイトルからして難しそうだなと思ってしまっていいて、そもそも池井戸さんの本を読んだことがないのでどうしようか迷っていましたが、この感想を読んでとても面白そうだなと思いました。
あらすじもとてもわかりやすく書かれていて参考になりました!
これから読んでいこうと思います。
ピグレットパンサーさん
私の感想がお役にたてて、とても嬉しいです。私は池井戸作品の中で「陸王」が一番好きです。
難しさは一切なく、本当に誰でも楽しめる作品だと思います。スポーツものや物作り系が好きならもう間違いなく入り込めますよ!
ドラマ化や映画化されそうな作品なので、映像でも見たいなーと思っています。
この小説のモデルとなった企業はありません。
と、公式ツイッターにありました。
とおりすがりさん
コメント有難うございます。記事修正しました!